January 30, 2006
セパレート
ユカリが帰ってから、お酒のペースが更に上がった。さっきまでやっていた、一気飲みゲームは終わったけど、酒宴は終わりそうにもなかった。男の子二人は、まだまだと言いながら、ウイスキーの瓶をラッパのみしている。もう一人の男の子はタバコを買いに、近所のコンビニに行ったきりで帰ってこない。時計は午前二時を指していた。タバコを買いに行った男の子は、外でタバコを吸っていた。ダウンを着てきたので、寒くはなかった。自分の部屋で行なわれていることを思うと、胸がつまった。でも、どうすることもできなかったし、しようともしなかった。とにかく、面倒くさいことは嫌なのだ。今日の鍋パーティーは、とにかく面倒くさかった。
サチエは眼前がぐねぐね廻り、手足が震えて止まらなかった。ときおり、強烈な吐き気が襲ってくる。カナは男の子の一人と楽しそうにじゃれあっている。そういえば、とサチエはふと思った。男の子の名前って何だっけ。鍋パーティーをはじめてすぐに、自己紹介をし合ったはずだった。だけど、名前なんてすっかり忘れてしまった。それどころじゃない、とサチエは考えていた。あたしもユカリと一緒に帰ればよかったんだ。身体に反して、頭の中だけは結構冷静だった。
一番カッコいい男の子がサチエの横に座った。「気分悪いの? 大丈夫?」そういって、男の子はサチエの背中を擦った。一番カッコいい男の子に背中を擦られて、サチエは満更ではなかった。「あ、うん、大丈夫だけど、もう限界かも」と言うと、カッコいい男の子はサチエに身体を近づけた。そして、耳元で囁く。「限界? 一緒に横になる?」ゾッとした。サチエは反射的に男を押しのけた。ふざけるな。馬鹿みたいに酒を飲ませておいて、結局はそういうことなのかよ。サチエは男を睨んだ。もう一人の男の子とカナは依然、いちゃいちゃしている。でも、カナの目は完全に据わっていて、もう限界なのだと思う。自分が何をしているのかも、判別がついていないに違いない、とサチエは冷静にそう思った。
男が、懲りずにサチエに寄ってくる。意識はあるのだが、身体がいうことを聞かない。男を突き放そうとするのだけれど、男はアイスホッケー部のエースで、身体が屈強でどうにもならなかった。男が身体を触ってくる。もう、嫌なのか、嬉しいのかさえもわからない。普段なら、結構嬉しかったりするのかもしれないけれど、こんな状態では何の感情も生まれない。とにかく、身体の震えと、強烈な吐き気をどうにかしてほしいとサチエは思う。男はサチエにキスをした。サチエは拒みも、受け入れもしなかった。正確には、拒むことも、受け入れることもできなかったのだ。ウイスキーの味がした。どうしようもなく下らないキスだった。
思考が止まる。サチエは、やっと正当に酔うことができた。男のキスがサチエを本来的に酔わせたのかもしれない。サチエは考えることができなくなった。何が起こっているのかもよくわからなくなった。とにかく、吐き気で苦しくて、楽になりたいと願っていた。下半身に電気が走ったみたいな刺激があったけど、サチエにはよくわからなかった。うっすら目を開くと、カナが裸で男の子とじゃれあってる。馬鹿じゃないとか思って、また目を閉じる。誰かがあたしのことを触ってる。誰かがあたしの上に乗ってきてる。ふざけんな。ふざけんなよ、でも、あたしにはどうすることもできないし、どうこうしようとも思わない。とにかく、吐いてしまいたい。でも、身体が動かない。サチエはそんなことを思っていた。でも、何が起こっているかは全然わからなかった。世界が揺れている感覚がある。
世界が揺れて、身体に変な感覚と下半身の鈍い痛みが続く。しばらくして、サチエは我慢が利かなくなった。ウイスキーが口から吹き出てきた。恥ずかしいと思った。力を振り絞り、立ち上がった。男が身体の上に乗っかっていたけど、それでも立ち上がった。そして、トイレに走った。上手く歩けなくて、何度か転びそうになったけど、玄関口の方に向かう。吐いてしまいたかった。今日のことを全部忘れてしまいたかった。よくわからない今日という日を、まるごと消してしまいたかったのだ。そのためには、吐くのが一番いいと思った。洗面所の横に、白いドアがある。胃液が喉元まで迫ってきていた。取っ手を握りしめ、それを目一杯の力で引っ張った。
トイレだと思ってドアを開けたら、そこは壁面にカビの生えたバスルームだった。セパレートだったんだ。サチエは、耐え切れずにそこで吐いた。バスルームの床面に吐瀉物が飛び散った。構うもんか。胃の中にあるウイスキーを吐き出したら、少し気が楽になった。このまま寝てしまえばいいと思った。寝て、また起きたら今日のことを考えればいい。サチエは洗面所に敷いてある湿ったバスマットに横たわった。その瞬間に、涙が零れ出た。知るか、と呟いた。まるで自分のじゃないみたいなそれが洗面所に響き渡り、それを聞いたら、サチエはぐっすり眠ることができた。
午前四時頃、外でぶらぶらするのにも飽きた男の子が部屋に戻ってきた。荒れ果てた自分の部屋を見て、真っ先に考えたのは、面倒くさいということだ。面倒くさいことがあるときには、寝るのが一番だと知っていた。男の子は、丸裸の四人を押しのけて、ゲロ塗れの自分のベッドに上がり、ゆっくり眠ることにした。眠りながら、男の子は弟のことを考えていた。そういえば、あいつ今年受験だよな。柄にもなく、弟のことが心配になり、来週、実家の山梨に帰ろうと決めた。
投稿者 loveforever : 12:30 AM | コメント (0) | トラックバック
October 21, 2005
ちかはキーボードを叩き【1】
僕はバンドを組んでいた。
ボーカル、ギター、ベース、ドラム、アルトサックス、
テナーサックス、トランペット、トロンボーン、キーボード
の計9人編成のバンドだ。
キーボードを担当していたのがちかだった。
僕はギターを担当していて、ちかとは仲が良かったんだ。
今から話す物語は、僕というよりは、ちかの物語だ。
もともと、アルトサックスのゆうじが呼びかけて結成されたバンドだった。
ほとんどのメンバーは京大の学生で、キーボードのちかと、
トランペットのあゆみだけが京都女子大の学生だった。
ちかとあゆみをバンドに誘ったのも、アルトサックスのゆうじだったんだ。
バンドはなかなか発進しなかった。
だって、9人もメンバーがいるものだから、練習するだけでも大変だったからだ。
特に、ドラムの久本は練習に来なかった。
だって、久本はバンド結成直後にドイツに留学してしまったからだ。
僕らのバンドは散々な船出を経験したんだ。
でも、ちかとあゆみだけは、練習に皆勤していた。
僕にはわかっていたんだ。
ちかはアルトサックスのゆうじのことが大好きで、
あゆみは僕のことが大好きだということが。
だから、二人は休むことなく練習に参加していたんだ。
全員が初心者で、碌に音も出ない練習に、
飽きずに参加していたんだ。
ちかがゆうじのことを見るときの眼は潤んでいた。
あゆみは露骨に僕を誘惑してきた。
問題だったのは、ゆうじにも、僕にも彼女がいたことだ。
つまり、ちかとあゆみの恋は、もともと実るはずがなかったんだ。
ちかとあゆみは、それを知っていてもなお、恋をやめなかった。
第一、恋なんてやめられるものじゃないんだ。
結成して3ヶ月ほど経つと、全員が何とか音を出せるようになっていたんだ。
全員が一斉に演奏をすると、それはもう不協和音に他ならなかった。
だけれども、全員で一つの音を出している喜びは感じることができた。
ちかも、あゆみも、ゆうじもみんな汗を流しながら練習していたんだ。
あゆみは僕に告白してきてくれた。
もちろん、僕は断ったよ。断るしかなかったんだ。
このせいで、バンドが終わってしまわないか心配だった。
だけれども、あゆみは恋でバンドを壊そうとはしなかった。
変わらず友達でいてほしいと言ってくれた。
僕はもちろん、笑顔で、顔を縦に振った。
だけれども、僕の危惧は近いうちに現実となってしまったんだ。
あれは7月のはじめだったと思う。
僕らは、一度もステージにあがることなく、バンドを解消した。
原因は、ちかとゆうじの恋だった。
その恋は深く、深く、あまりに深すぎたが故に、
何もかもを巻き込んで、すべての状況を一変させてしまったんだ。
投稿者 loveforever : 02:36 AM | コメント (0)
July 22, 2005
きみよが好きでしかたないひと
きみよと僕は、生徒と先生の関係だった。
僕が大学三回のときに、きみよは高校三年で、
きみよは僕がアルバイトをしていた塾の生徒だったのだ。
僕は英語を担当していた。
延々と、グラマーの問題集を解きつづける退屈な授業だ。
きみよは、そんな退屈な授業をいつも真剣に聞いていた。
授業が終わると、きみよは真っ先に僕の元にきて、質問をする。
内容は英語に関するものであり、そこに私語は存在しなかった。
だけれども、きみよは僕を、誘惑していたに違いがないのだ。
僕にはそれがわかっていたんだ。
わかっていたけれども、僕は何かしようとなどしなかったし、何もできやしなかった。
きみよは、僕が説明をしている間、ずっと僕の眼を見ていた。
質問をするのに、ずっと眼を見る必要なんてあるのだろうか。
きっと、眼なんて見る必要はないんだ。
だけれども、きみよは僕の眼をずっとずっと見つめていたんだ。
受験を間近に控えた冬のことだったんだ。
「せんせいは、彼女さんいるの?」
教室に二人きりで、質問を受けているとき、きみよはそんなことを聞いてきた。
教室に、生徒と二人きりになることは、会社の規約で禁止されていた。
そのことを僕は知っていたけれども、僕は教室を出ようとしなかったんだ。
何でだろう。それは僕にもわからない。
きみよと、こうやって二人でいることを、つづけたかったんだ。
「彼女? いるに決まってるやん。僕はモテるからな」
「自分でモテるとかいうの、カッコ悪いよ?」
きみよは微笑みながら、そう言った。確かに、カッコ悪い。
「そんなことない。ホンマにモテる男は、正直にそう言うもんや」
「ていうか、せんせいって、そんなにカッコよくないじゃんか」
「うるさいよ。放っとけ」
急に、きみよは僕の手をとって、まじまじと眺めはじめた。
「何してるん?」
「何って、せんせいの手を見てるんだよ」
「それは知ってるわ。何で僕の手を見るの?」
「せんせいのことが好きで好きでしかたないから」
「そっか」
僕はそう言って、手をきみよから離した。
きみよは僕の眼を、ずっとずっと見ていた。
「せんせいの眼は、すごい綺麗なんだ。だから、あたしはせんせいの眼を見るの」
僕はからかわれているのだと思っていた。
女子高生に翻弄される自分が情けなかった。
「そういうの、気まずいからやめてくれへん? 僕はあれやん、一応、「せんせい」やから」
「うん、あたし、そんなせんせいが好きでしかたない」
「わかったから、勉強しろ。お前は受験生やねんから」
僕はそう言って、教室を出た。
きみよは追いかけてはこなかった。
そして、ビルを出て、タバコを吸った。
風が冷たくて、外にいると滅入りそうになった。
僕は少し動揺していた。
きみよの眼はすごく美しかったんだ。
だから、僕は動揺していたんだと思う。
しばらくして、僕はボールペンを教室に忘れたのに気づいた。
教室に戻ると、きみよはもう、帰った後だった。
いくら探しても、ボールペンはなかった。
それは、すごく気に入っていたボールペンだったんだ。
僕はボールペンを諦めて、家に帰ることにした。
下駄箱に小さな紙切れが入っていた。
きみよの字だ。ボールペンで殴り書きされたきみよからの手紙だ。
私が大学に入ったら、私は先生の彼女になるから
それまで、ボールペンをお守りに貸してください
きみよは神戸大学に落ち、早稲田大学に進学した。
合格祝賀パーティーに、きみよは来なかった。
それ以来、僕ときみよは一度も会っていないし、連絡先も知らないんだ。
だから、僕の気に入っていたボールペンは今もきみよに貸したままなんだ。
僕の最後の授業のあと、きみよはいつものように質問にきた。
いつものように質問をし、いつものようにずっと眼を見てきた。
「せんせいの眼、やっぱり綺麗だね」
きみよはそう言って、家に帰っていったんだ。
投稿者 loveforever : 02:44 AM | コメント (0) | トラックバック
July 19, 2005
さつきは確かに桜の香りがした
さつきという肉体の悪魔の続き。
僕は頻繁にさつきの家に泊まっていた。
さつきには彼氏がいなかったし、僕には彼女がいなかった。
そうであるので、度々の宿泊には何ら問題はなかったのだ。
何をするわけでもなく、僕たちはテレビを見たり、音楽を聴いたりしていた。
時にはさつきが料理を作ってくれることもあった。
だけれどもそれをされると、
何だかまるで彼氏と彼女のような気持ちになってしまうので苦手であった。
たくさんのセックスをした。数え切れないくらいのセックスを。
さつきは日に日に、セックスが上手くなっていた。
僕を喜ばせる術を身につけてしまったみたいだった。
「どうして二人は付き合わないの?」
そんな質問を、さつきの友達のみかにされた。
「さあ、どうしてだろう、僕にもそれはわからないんだ」
実際のところ、僕たちは付き合っているに等しかった。
外側から見れば、紛れもなく恋人同士だったのだ。
だけれども、僕たちからすれば、それは絶対に違った。
僕たちの間に、恋という気持ちは存在しなかったのだ。
僕たちはとりあえずセックスをし、とりあえずその関係をつづけているだけだったのだ。
さつきは、僕に好きなんて言葉を言ったことはないし、僕もそうだった。
酔った勢いで、付き合おうか、と僕が言っても、さつきはそれをはぐらかした。
さつきには付き合うつもりなど毛頭なかったのだ。
近所の奥さんのパンティ一万円
近所の奥さんのガードル六千円
近所の奥さんのエプロン三万円
大学二回の春、僕に好きな人ができた。
アルバイト先の飲食店にいた、年上の女性だった。
笑顔が素敵で、美しい人であった。
久しぶりに胸が高まった。告白しようと思った。
何となしに、僕はそのことをさつきに告げた。さつきに一番最初に告げた。
さつきは泣きながら、怒鳴った。
「わたしはどうすればいいのよ?」
そんな風に言いながら、さつきは僕のTシャツを伸びるくらいに引っ張った。
「僕たち、付き合っているわけじゃないねんで?」
「そんなことわかってるけど、わたしは、わたしは、たくちゃんと離れたくなんだもん」
「じゃあ、僕はどうすればいい?」
さつきはその問いに答えることなく、泣きつづけた。
外では桜が散りはじめていた。もう、春も終わるのだ。
僕はさつきの顔を見てみた。
そういえば、僕はさつきの顔を意識して見たことがなかったのだ。
二重の眼、小さな鼻、薄い唇、チークで紅い頬、口元の小さなほくろ・・・。
さつきは、とても可愛い顔をしている。それは確かだ。
すべてが新鮮に映った。まるで、今横にいるのがさつきではないように新鮮だったんだ。
眼には涙が溜まっていて、ドライに見えていたさつきの印象は一瞬で変わった。
さつきだって、恋をするし、さつきだって、涙を流すんだ。
さつきだって、大切な人と、大切な時間を過ごしたいと思っているんだ。
だから、今こうやって泣いているんだ。
失っていた純情を取りもどしたくて、さつきは泣いているんだ。
「僕のこと、好き?」
僕は恐る恐る、そう聞いた。
しばらくの間の沈黙。僕は外を見ていた。
桜の花弁が一枚、窓ガラスにはりついている。
「たくちゃんは? わたしのこと、好き?」
「好きだよ」
「わたしも、好きに決まってるじゃん」
世の中には、こんな風にはじまる恋もあるのだ。
僕はさつきにキスをして、手を繋いだ。
寄り添ってくるさつきからは、確かに桜の香りがしたんだ。
投稿者 loveforever : 02:59 AM | コメント (81) | トラックバック
July 14, 2005
さつきという肉体の悪魔
さつきと知り合ったのは、学部一年の冬のことだった。
僕は大学に入学してから一年間は、
ほとんど学校には行かず、毎日地元大阪の友達と遊び歩いていた。
京都大学に入学しただけで、僕は何事かを成し遂げたような錯覚に陥っていたのだ。
僕は怠惰そのものの生活を送っていたのだった。
それは悪いものではなかった。
受験勉強から解放され、一応、名門大学の学生であったわけで、
それは何をしていても楽しいという状況を生み出してくれたのだ。
さつきは僕と同い年で、関西大学に通っていた。
愛媛県出身で、一人暮らしをしていたため、僕はよく、さつきの家に泊まった。
別に、僕たちは付き合っていたわけではない。
ただ、お互いにお互いのことを気に入っていただけだ。
それだけで、僕らは一緒の夜を過ごすことができたのだ。
最初にさつきの家に泊まったのは、僕とさつきが知り合った夜だった。
地元の友達とドライブに行ったとき、さつきもそこにいた。
僕の友達の関西大学の学生の、友達だったのだ。
僕らは同じ車の、後部座席に座って、話をした。
妙に話があって、そして、ドライブが終わって家に帰る頃には手を繋いでいた。
僕はそのまま、さつきの家に泊まった。さつきが泊まってほしそうにしていたから。
もちろん、僕もさつきの家に行ってみたいと思っていた。
何せ、さつきは飛びっきり可愛かっただもの。
さつきがシャワーを浴びている間、僕はテレビを見ていた。
タイトルは忘れたけれども、戦争を題材とした映画だった。
主人公の家族は、兄を残して全員、戦死した。
その情景は、僕には無縁のものであるように思われた。
少なくとも、今の僕には関係のない話だった。
僕はこれから、さつきと一緒のベッドに入ってとっておきの楽しいことをするのだ。
そのような幸せで楽しい時間を待っている僕には、
家族を戦争で亡くす悲しみを真に理解することは適わなかったのだ。
さつきはシャワーから戻ると、バスタオル一枚で僕に微笑みかけてきた。
昇天してしまいそうであった。
僕たちは、まず、キスをした。長い長いキス。
まるで二人は愛し合っているかのように、長いキス。
それでも、僕には二人の間にある壁が見えた。
大学に入学して、とりあえず、男と女が求め合うのはよくあることなのだ。
日本の大学生、とりわけ優秀な大学の学生の大半は、
高校時代の多くの時間を受験勉強に割いている。
その反動が、大学一回のときにやってくるものだ。
僕とさつきはまさにそれで、特段の理由もないままに、
同じベッドで性的な関係を結ぼうとしていたのだ。
躍起になって、とりあえずセックス。
クラスメイトには負けていられない、とりあえずセックス。
セックスさえしておけばなんとかなる、とりあえずセックス。
僕たち日本人の若者は、とりあえずセックスをしてみるのが大好きなのだ。
淡白なセックスを終えて、僕たちはテレビをつけた。
さっき見ていた戦争映画の続きが流れていた。
どうやら、主人公は結婚し、家庭を築くことができたようだ。
美しい妻と、愛らしい娘に囲まれ、主人公は亡き家族のことを思い出していた。
「あなたたち(亡き家族)のおかげで、僕は今幸せで仕方がないんだ
あなたたちのためにも、僕は新しい家族を幸せにしようと思うんだ」
僕には、主人公が言ったその台詞は理解できなかった。
だって、世界は、明日も世界のままなのだから。
明日の朝起きれば、特段好きでもないさつきが横に眠っているはずなのだから。
そうであるのだから、改まって、幸せを希求なんてする必要はないのだ。
「たくやくん、チャンネル変えていい?」
パンティーだけ履いていて、乳房を剥き出しにしたさつきが僕に聞いてきた。
戦争映画は、もう終わっていた。
「うん。変えていいよ。ていうか、ここさつきの部屋やんか」
「だって、たくやくん、真剣にテレビ見てたっぽからさ」
僕はさつきの小さな乳房に触れた。
柔らかなそれは、僕の指先から、頭の天辺までを刺戟した。
「もう一度、しよっか?」
そういって、僕はさつきをそばに寄せて、キスをしはじめた。
明日は月曜日だけれども、僕らにはそのことは関係がなかった。
僕たち大学生は、ありとあらゆるものよりも自由を謳歌できたのだから。
いつだって、自分の気のみ気のままに行動することができたのだから。
僕は、さつきという肉体の悪魔にむしゃぶりつくことを、
しばらくの間つづけてみようと思ったのだった。
「たくやくん、たくやくんのエッチ、すごくいいよ」
そんな言葉をはくさつきは、僕にとってどうでもよく、
そのように思う僕は、さつきにとってどうでもよい存在なのだ。
だからこそ、どうしようもないこんな時間を共有できるのだ。
大切な人と、こんな下らない時間を過ごせるものか!
僕だって、大切な人を幸せにしたいと思っているのだから。
投稿者 loveforever : 11:55 PM | コメント (1) | トラックバック
July 09, 2005
ゆきこ vol.2
ゆきこの続き。
ゆきこと僕は別れた。
「いつまでも、さようなら」
そんなきざな言葉を吐いて、僕は彼女と永遠に別れたはずだった。
永遠の別れの半年後、ゆきこから電話がきた。
「もしもし。ゆきこ。久しぶり。元気? 時間あったら、会わない?」
「もちろん」
僕はそう返事をして、僕たちは夜の7時に、梅田のサンマルクで会うことになった。
「たくちゃん、変わってないね」
彼女は僕を見るなりそう言った。そして、ミルクティーを啜った。
外は冷たい風が吹いていた。季節はすっかり変わっていたのだ。
「そりゃ、半年で変わるはずおまへんがなぁ〜。ゆきこも大人っぽくなったがなぁ〜」
クスクスと笑う彼女、彼女は確かに大人になっていた。
あの頃、彼女はいつだって笑っていた。
「どうしたん、いきなり〜、俺、びっくりしてもうたがなぁ〜」
ド ン マ イ イ ン ザ ス カ イ
「別に、何もないんだけどね。たくちゃんの顔、見たくなっちゃって」
ド ン マ イ イ ン ザ ス カ イ ラ ー ク
「ありがとう。嘘でも嬉しいがなぁ〜、僕も、ゆきこの顔を見れてよかったにゃん」
ド ン マ イ イ ン ザ ス カ イ マ ー ク エ ア ラ イ ン
何を話したのか、今はもうはっきりと覚えていない。
大したことは話さなかったのだと思う。
近況だとか、最近の恋愛だとか、過去の思い出話だとか。
そういったことをたったの一時間だけ、語り合ったんだ。
一時間、それは二人の距離を元に戻すのに十分な時間だった。
会って二時間後、僕たちはラブホテルの一室に場所を移し、話の続きをしはじめた。
だけれども、そこには話の続きなんて存在していなくて、違う何かを二人共に求めていた。
どうして、ラブホテルなんかにやってきたのかはわからない。
あの頃、当然のようにそうしたように、今もまた、そのようにしたにすぎないんだ。
ネオンが光る街並だ。夜がやってきたんだ。
夜は僕らに馴染みの時間なんだろう。夜が僕らのステージなんだ。
だって、二人は夜になるとしっくりくるんだから、きっとそうなんだ。
僕らはセックスなんてしなかった。ただ、手を繋いで、キスをした。
僕らはセックスなんてしたことがなかったんだ。
彼女は、セックスができないんだ。僕はそんな彼女が好きだったんだ。
深夜の3時まで映画を見ていた。見れるだけ見ようとしていた。
その間、僕らはほとんど話をしなかった。そんなものは必要なかったんだ。
ただ、こうやって手を繋いで、二人でラブホテルにいることがしっくりきたんだ。
それだけでよかったんだ。
「なあ、ゆきこ、僕たち、やり直さない?」
「うん。やり直すんじゃなくて、もう一度、はじめてほしいんだ。我儘な私でいい?」
「もちろん。僕はゆきこがいいんだよ」
すやすや眠るゆきこのいるベッドから出て、僕は窓を開ける。
夜の街ではネオンが輝いて売春婦が売春婦が売春婦が春を売る、売る、売る。
僕はラブホテルの窓から叫びたい。
「決して春を売るな、売るな、売らないでくれ、そんなものを売らないでくれ、それは商品じゃない、決して商品じゃない、それはあなたであって、他ではない生身のあなた自身であって、誰かに売り払うものではない、売り払ってはならない、売るな、春を売るな、売るな・・・売ったら、あかんねんでぇ〜」
しかし、僕は叫ばない。なぜなら、そこにはゆきこがいるから。
ゆきこの寝顔を見ながら、いずれ二人にやってくるであろう再度の別れを考えた。
悲しくはなかった。それはあまりにもありふれているものなのだ。
僕は別れることなど恐れることなく、このゆきこを愛そうと思った。
ああ〜、好っきゃわぁ〜、ゆきこぉ〜
投稿者 loveforever : 12:31 AM | コメント (0) | トラックバック
July 07, 2005
ゆきこ
kyoto-u.com雑談板の「ブログ」トピックに、
盛り上がってるけど 2005/07/06(水) 17:20:08
ラブフォーエバーとカレーライスはいらん。
という書き込みがありました。ほうほう・・・
よくわかってらっしゃる。
さて、本題。レッツ、DQQQQQQQQQQN☆
今回のニッポン・ガールはゆきこちゃん(当時21)だ。
二十歳の夏、僕は地元の友達が集まる飲み会に参加した。
その飲み会に顔を出していたのが、マイ・スイート・ゆきこちゃんだ。
背が低くって、ずっと笑っている、そんな彼女に僕は一目惚れをした。
彼女こそ僕の、ラブ☆フォーエバーな女の子だと思ったのだ。
僕は彼女をデートに誘った。
カラオケに行ったり、買い物をしたりしながら、沢山のお話をした。
飼っているペットの話、タイプ、高校時代のこと、過去の恋愛・・・
彼女が隣にいる、それがたまらなく嬉しかったっけ。
ダメもとで告白。すると、すんなりOKの返事をくれた。
飛び上がるほど嬉しかったんだ。
僕らは順調に愛を深めていった。ラブ☆フォーエバーを信じて疑わなかった。
ゆきこちゃんと僕はいろんなところへ行って、いろんなことをした。
ゆきこちゃんの運転でドライブに行ったり(僕はペーパードライバー)、
本屋さんで一緒に本を探したり、城崎の温泉に浸かりに行ったり、
遊園地で絶叫マシーンに乗りまくったり、無駄にプリクラをいっぱいとったり、
ケーキバイキングに行ったり、青森りんご娘青森りんご娘青森りんご娘、
坊主の頭に風景画を描いたり、風景画に坊主の頭を描いたり、
青 森 り ん ご 娘
僕の家で愛し合ったり、僕の家でケンカしたり、僕の家でりんごを食べたり、
そんな、たくさんのことをした。
その一方で、彼女はおかしな行動をすることが多かった。
たとえば、彼女は金曜日の夜にいつも、遊びに行っていた。
決まって、金曜日の夜。友達と遊んでると言っていたから、僕は疑わなかった。
甘かった。彼女は相当に尻軽ガールであったのだ。
近くの公園を歩いていると、僕は気づく。今日の彼女には笑顔がない。
いつもは笑顔に満ち満ちている彼女の顔は、思案に耽るそれであったのだ。
嫌な予感がした。胸が苦しくなった。彼女はほとんど喋らない。
汗が滲み出してくる。秋風が吹いていたけれども、僕は暑くて仕方なかった。
「突然、呼び出してごめんね」
「あ、ええよぉ〜、今日は学校あらへんし、暇しとってんやん、がはは」
「うん。それならよかった」
「ゆきこ、どうしてんな、いきなり、びっくりしたがなぁ〜、会いたかったんかいな、僕にぃ〜?」
「話があってね、聞いてくれる?」
「そら、聞くがな〜、ここで『聞きやせぇへん』とか言うのは空気読めん奴やがなぁ〜」
「じゃあ、はっきり言うね。別れよう? わたし、好きな人できたから」
時間が止まった。僕の頭のなかでは、青森りんご娘が巨峰を握りしめ、
「りんごより、巨峰の方が百万倍美味しい」
と叫んでいた。彼女は僕の答えを待っていた。じっと、僕の顔を見ながら。
自分の前を立ち去ろうとする人に、どのような言葉をかければよいのだろうか。
お体に気をつけて、か。それではまたいつか、か。
それとも、いつまでもさようなら、か。
それが僕にはわからなかったのだ。だから、僕はいつまでも押し黙ったままであった。
ただひたすらに、彼女から口を開くのを待っていた。
彼女との、永遠の別れを覚悟しながら。
「嘘だよ」
「え?」
「だから、今言ったこと、全部嘘」
「え?」
「たくちゃんのこと試してみたの。別れたい、って私が言ったら、とめてくれるかなって」
僕は言葉がでなかった。
唇を噛み、拳を握り締める。空を見上げる。曇っていて、星は見えない。
猫の鳴き声が聞こえる。彼女の呼吸の音が聞こえるくらいに、辺りは静まりかえっている。
気づいたら、僕は彼女を抱きしめていた。
「やめてぇ〜やぁ〜、一瞬本気で泣きそうやったやんかいなぁ〜(汗」
僕には、彼女を怒ることなんかできなかった。
だって、好きだったんだもん。
二ヵ月後、彼女は同じことを言って、今度は本当に僕の元を去っていった。
予行練習をしてくれた彼女の優しさを身にしみながら、僕は
「いつまでも、さようなら」
と言って、彼女の手を放したのだった。
ん、オチ? そんなんないよ。